[宮地陽子コラム第27回] FIBA W杯: 米国代表の頼れる男、ケネス・ファリード

[宮地陽子コラム第27回] FIBA W杯: 米国代表の頼れる男、ケネス・ファリード

どうやら、何気なく聞いた質問がケネス・ファリードの気に障ってしまったようだった。

8月末からFIBAバスケットボール・ワールドカップの取材のためにスペインに来ているのだが、予選ラウンドが終わった時点で、アメリカ代表の中で平均得点が二番目に多かったファリードに、彼の活躍について聞いたときのことだ。

別に変なことを聞いたわけではない。ファリードはもともと、ディフェンスやリバウンド、そしてハッスルプレーを期待されていて代表入りした。それがふたを開けてみたら、チームMVPというだけでなく、大会MVP候補にも挙げられるような活躍。アメリカ代表ヘッドコーチのマイク・シャシェフスキーも、ファリードはチームで一番予想外の活躍をしている選手だと言っていた。そこで、アメリカ代表の中でこれほどできると自分で思っていたかどうかを聞いたのだった。

「それは、少し失礼だと思う」とファリードは言った。

「僕はバスケットボール選手としてプレーできるし、それをやるためにここに来たんだ」。

単なるハッスルプレイヤーではなく、オフェンスも含めて、オールラウンドな能力を持っているという自負があるだけに、得点できることが意外なような言い方をされるのは心外というわけだ。

このときは、失礼なことを言うつもりではなかったのだけれど……と、しどろもどろで言い訳して終わったのだが、その数日後、ファリードはデンバー・ポスト紙のコラムニストの電話インタビューで、単なるハッスルプレイヤーとしてしか評価されないことに対する反論を語っていた。

「僕は自分のことをエナジー・プレイヤーだと見たことはない。ただ、他の人たちよりもバスケットボールに対してずっと多くの情熱をもっていて、全力でプレーするだけのこと。バスケットボールは才能だけで決まると思っている人もいるけれど、僕は才能と情熱を両方持っている」。


もっとも、今回のアメリカ代表を取材してみてわかったことだが、ファリードは私の質問だけでなく、人のちょっとしたコメントに頻繁に侮辱された気分になる人のようだ。それが、彼のエネルギーの源になっているところもあるのかもしれない。

たとえば、アメリカが大会準決勝進出を決めた後、勝ち残っているチームを考えると、アメリカのビッグマンたちもそれまでのように相手を支配することは難しいだろうと言われたときのこと。


「それは大きな無礼だ(massive disrespectful)」と言ったのだ。"massive"という、こういう場面ではあまり使わない形容詞で、無礼の具合を強調したわけだ。準決勝で対戦するリトアニアのビッグマン、ジョナス・バランチュナスについては、「いいビッグマンで、インサイドでは存在感を示すだろうけれど、僕らも彼と戦う準備ができている。何に対しても準備ができている」と、自分たちも十分に戦力として揃っているのだと主張した。

別のときには、今回のアメリカ代表がBチーム"(二軍チーム)だと言われることについても、憤慨していた。

「それは無礼な表現だ。スーパースターを送り込んでいないから以前ほど強くないって? その言葉には『ありがとう。それが僕らのモチベーションになる』と返すよ」。

大会前からアメリカとスペインの決勝が期待され、地元スペイン有利の声も大きかった。しかしアメリカが圧倒的な強さで決勝進出を決めたのに対して、スペインは準々決勝でフランスに敗れてしまった。

スペイン敗退と、アメリカの決勝進出が決まった後、ファリードは言った。

「これについてはずっと言うのを我慢していたのだけれど、僕らがこの大会で、やるべきことをやっていたのに、君たち(メディア)はみんな『でもスペインには勝てないだろう』と言っていた。スペインはフランスを倒すことすらできなかった。スペインが決勝で僕らと対戦できるようになったら、そのときに僕のところに聞きに来てくれ」。

今回のワールドカップ、王者アメリカ対地元スペインという夢の決勝は実現しなかったが、少なくとも、我々はスペインの地で、コート上(プレー)とオフコート(取材)の両方で頼れるスーパースターを発見した。それは、この大会を取材しに来たことで得た大きな収穫だった。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji



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